新型コロナウイルス感染症に対するワクチンのうち、主要成分としてmRNAを用いているワクチンがあります。mRNAは、体内の細胞外の環境ではとても不安定なもので、生体内の核酸分解酵素により急速に分解されてしまいます。そのため、体内に投与する場合はmRNAを安定に保持する仕組みが必要です。そこで、mRNAを用いた新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社やモデルナ社など)では、体内で安定させ細胞まで運ぶための仕組みとして、mRNAを包む脂(脂質ナノ粒子:脂質やポリエチレングリコールから成る)を用います。その他、塩類・糖類・緩衝剤です。これらの成分は、どれもこれまでにヒトの体に投与した経験があるものです。現在承認済み或いは日本で開発中のmRNAワクチンには、免疫反応をより良く起こすための成分(アジュバント)や、水銀を含む保存剤は一切含まれていません。
新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンのうち「コミナティ筋注」によるアナフィラキシーの原因として一番可能性が高いと考えられているのはポリエチレングリコールという物質です。ポリエチレングリコールは大腸検査の下剤などの医薬品、化粧品や歯磨き粉などの日用品等に幅広く使われています。このようにポリエチレングリコールは本来、安全性の高い成分ですが、ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールと構造の似ている物質(ポリソルベート)にアレルギーのある人はmRNAワクチンの接種を控えたほうがよいと考えられます。
■ポリエチレングリコール
ポリエチレングリコールは高分子の化合物で、添加物として化粧品やシャンプー、リンス、洗剤のほか、慢性の便秘薬や軟こう、座薬など医薬品にも広く使われています。優れた潤滑性や水に溶けやすい溶解性があるため、異なる物質が混ぜ合わせやすくなります。そのことにより、化粧品の保湿効果を高めたり、医薬品の品質を保ったり飲みやすくしたり働きがあります。
化粧品に配合される場合は、皮表柔軟化による保湿作用や増粘の目的で使用されます。これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、洗顔料、洗顔石鹸、シャンプー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、クレンジング製品、ヘアスタイリング製品など様々な製品に汎用されています。
PEG(医薬品・医薬品添加物記載名称:マクロゴール)の化粧品以外の主な用途としては、医薬品分野において毒性が低く様々な性状があり汎用性が高いことから主に軟膏基剤、座薬基剤、錠剤のコーティング剤や結合剤(バインダー)として広く用いられています。また、歯磨き剤においてはタバコのヤニ除去有効成分として薬用歯磨き剤に用いられています。
■ポリソルベート
ポリソルベートは、ノニオン(非イオン)性界面活性剤で、食品添加物以外に乳液や洗顔料などの化粧品や軟膏クリーム、注射剤、ドリンク剤など医薬品などさまざまな分野で使用されています。
ポリソルベートの種類は以下の4種類です。どれも基本のポリオキシエチレンソルビタンという物質に脂肪酸を結合させたものです。このポリソルベートという乳化剤は水と相性が良くさまざまな食品に使用されています。また、ポリソルベートの後に、20、60、65、80と数値が表記されていますが、これは数値が高くなるにつれて油に近い性質があり、低いほど水に近い性質になります。
使用されている食品は、アイスクリーム、チョコレート、ドレッシング、ココア、インスタントラーメンの調味料、マヨネーズ、洋菓子、飴、野菜の漬物、チーズ、ショートニングなどです。
洋菓子の製造の際にショートニングを使用することにより滑らかさやしっとり感を出す場合がありますが、原材料表示にはショートニングと記載されています。それは原材料の添加物のためです。食品以外では薬用のクリームや化粧品などに使用されています。
また、ポリソルベートは、加熱等の処理をしなくても簡単に水と油を乳化することが出来るため、ポリソルベートを使用して化粧品手作りしている人もいます。
Kaori Nomura nom2kaori@gmail.com