favipiravir(アビガン)とremdesivirへの日米行政支援の差

ギリアド社のプレスリリースからも分かる通り、レムデシビルは一気に複数の臨床試験を走らせることができました。それはどのようにして可能になったのでしょう?

ギリアド社が企業治験として企画したのは患者を対象とした投与期間を検討する第3相試験です。
米国本社 
日本支社 
一方、広いスペクトラムを持つと考えられていて抗ウイルス活性がin vitroで示された[1] remdesivirの評価をいち早く進めるために、米国では国立の研究機関 National Institute of Allergies and Infectious Diseases (NIAID)がプラセボ対照の二重盲検比較試験を1000名規模で実施しています。[2]
ここが日本との差です。

日本ではアビガンの臨床応用のために厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部がとった行動は、なんと観察研究であり[3]、有効性を検証するための臨床試験で鼻なかったのです。そのため、企業が治験の被験者をリクルートしようとしても、この観察研究があるために医師も患者も治験に参加しないという状況を作ってしまいました。
これはひいては、日本において企業がアビガンの薬事承認申請をすることを遅らせてしまうことになりました。残念です。

[1]Wang, M., Cao, R., Zhang, L. et al. Remdesivir and chloroquine effectively inhibit the recently emerged novel coronavirus (2019-nCoV) in vitro. Cell Res 30, 269–271 (2020). https://doi.org/10.1038/s41422-020-0282-0
[2NIH Clinical Trial Shows Remdesivir Accelerates Recovery from Advanced COVID-19. 29 April 2020. ]https://www.niaid.nih.gov/news-events/nih-clinical-trial-remdesivir-treat-covid-19-begins
[3] 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部. 新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビルに係る観察研究の概要及び 同研究に使用するための医薬品の提供に関する周知依頼について. 27 April 2020. https://www.mhlw.go.jp/content/000625756.pdf