開発番号:MK-4482,EIDD-2801(メルク/ Ridgeback Biotherapeutics)
成分概要
米国エモリー大学内ベンチャー創製の成分で、インフルエンザ治療薬として検討されていた抗ウイルス成分。広域活性を持つ治療薬候補成分として、2020年4 月サイエンス誌Translational Medicineに論文発表された[1] 。レムデシビルに対する耐性変異を有する SARS-CoV-2に対しても高い活性を有する(in vitro)。
作用機序
モルヌピラビルは代謝されてシチジン様のリボヌクレオシド誘導体となる、プロドラッグである。ウイルスRNAのコピー時にシチジンの代わりに誘導体を取り込むエラーをおこすことにより、ウイルス増殖を抑える。
臨床開発
メルクは2020年10月19日に国際治験を開始[2] 。
2021年10月1日、国際共同第Ⅲ相治験の中間結果(対象775人、2021年8月5日以前に登録)が良好であったことを発表した[3] 。日本を含む多国籍170施設以上が参加した。
有効性
リスクを有する入院していない軽度〜中等度のCOVID-19成人患者を対象とした第3相治験(MOVe-OUT 試験)における中間分析では、モルヌピラビルはプラセボに対して無作為化後29日目までの入院または死亡のリスクを約50%減少させた(モルヌピラビル群7.3 %(28/385)、プラセボ群14.1%(53/377)、p=0.0012)。死亡例は、モルヌピラビル群0人、プラセボ群8 人であった。治験の良好な結果を踏まえて、治験の独立データ監視委員会と米国食品医薬品局(FDA)の協議により、治験は早期中止となった(治験計画の9 割以上登録済み)。
モルヌピラビルは、すべての主要なサブグループで入院および/ または死亡のリスクを軽減した。発症のタイミングや併存する危険因子は有効性に影響を及ぼさなかった。利用可能なウイルスシーケンスデータを持つ被験者(全体の約 40%)データでは、モルヌピラビルはウイルス変異株(ガンマ、デルタ、ミュー)で一貫した有効性を示した。
安全性
有害事象の発生割合は、モルヌピラビル群(35%)とプラセボ群(40%)で同等だった。同様に、薬剤関連有害事象の発生割合も同等(それぞれ12%、11 %)であり、有害事象のために治験治療を中止した被験者はプラセボ群(4.3%)と比べてモルヌピラビル群(1.3%)の方が少なかった。
治験時用法用量
200mg/400mg/800mg いずれかを1日2回、5日間投与
適格/除外基準
18歳以上
検査で陽性が確認された軽度から中等度のCOVID-19患者
症状が発現してから5日以内である
COVID-19の重症度がmild又はmoderateである
COVID-19の重症化と関連する背景因子又は基礎疾患を1つ以上有する
入院療養ではない
ワクチンを一度も接種していない
妊娠していない/避妊に同意した患者
など
供給体制
メルクと米国政府はEUAあるいは承認の取得とともに170万人分を供給することで2021年初めに合意。その他の国々とも合意または交渉中。世界的に1000 万人分を2021年末までに供給する予定。
国内治験
MK-4482-002 試験 治療
jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031210148
MK-4482-013 試験 予防
jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031210281
——————————
[1] Sheahan et al. An orally bioavailable broad-spectrum antiviral inhibits SARS-CoV-2 in human airway epithelial cell cultures and multiple coronaviruses in mice. SCIENCE TRANSLATIONAL MEDICINE. 2020:12(541). eabb5883 (2020). DOI:10.1126/scitranslmed.abb5883
[2] clinicaltrials.gov/ct2/show/record/NCT04575597
[3] www.merck.com/news/merck-and-ridgebacks-investigational-oral-antiviral-molnupiravir-reduced-the-risk-of-hospitalization-or-death-by-approximately-50-percent-compared-to-placebo-for-patients-with-mi…