アビガンが大変注目されていましたが、実は、アクテムラも日本発の薬です。そしてアビガン に期待されているウイルス増殖を抑えることとは別に、万が一、症状が悪化してサイトカインストームといういわゆる自己免疫機能が暴走した場合に有効だと考えられているのが、アクテムラです。COVID-19の多くは自覚症状なしあるいは風邪の軽症で済みます。味覚異常や断続的な咳、酸素濃度低下などの臨床症状が現れるのは中国武漢でも2割程度ということでした。では、サイトカインストーム(免疫暴走)が起きた時に有効だと考えられているアクテムラとはどのような薬でしょうか。
アクテムラ:開発の経緯 インタビューフォーム(2020年4月)より
アクテムラ(トシリズマブ)は、日本で開発されたIgG1サブクラスのヒト化抗ヒトインターロイキン6(IL-6)レセプターモノクローナル抗体である。遺伝子組換え技術により、可変領域の中でも特に抗原との親和性が高い相補性決定領域(CDR)をマウス型ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体とし、その他の部分をヒトIgG1としてチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて創製された。IL-6は、1982年、吉崎らによりB細胞を抗体産生細胞に分化誘導する因子として発見後1)、1986年に平野、岸本らによりクローニングされた2)。その後の研究によりIL-6は、炎症反応、種々の細胞の分化誘導や増殖、免疫反応の調節あるいは血小板増多等、多様な生理作用を有しており、関節リウマチ(RA)、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、キャッスルマン病等の病態に深く関わることが示唆された。
アクテムラ静注用インタビューフォーム
アクテムラ(トシリズマブ)は、IL-6の生物学的作用を阻害することから、RA等のIL-6が関与する疾患の治療薬として1999年より開発が進められた。その結果、世界で初めてのヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体として2005年4月に日本でアクテムラ点滴静注用がキャッスルマン病※1に対する承認を取得した(キャッスルマン病に対する希少疾病用医薬品に指定されている)。さらに2008年4月にRA、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(pJIA)、sJIAに対する効能又は効果が追加承認された。
私が医薬品医療機器総合機構(PMDA)に在籍したいた頃に、最初のキャッスルマン病での承認申請がありました。新規性が高く、市販後の安全性監視(Pharmacovigilance)の面から関わりました。懐かしい品目です。
アクテムラは新型コロナウイルス感染症患者を対象として世界各国で治験が進められており、その結果が得られることが期待されています。
https://clinicaltrials.gov/
検索語 COVID, Tocilizuma