日本では治験が進まなかったことが明らかになりました。国を挙げて治験を推進する、アメリカやロシアと比べると、日本政府から企業や治験実施医療機関への後押しはあったのかなかったのか、気になりませんか。
あえて挙げるとすれば厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策本部が、企業治験では無く、観察研究と医師主導臨床試験を都道府県宛に事務連絡したことくらいでしょうか[1]。承認済みの医薬品という理由で企業任せにしていたように見受けます。しかし、観察研究を後押しすることにより適応拡大のための治験が阻害されるという想像力は厚労省にはなかったのでしょうか。実際、数千人にも投与されているという話がある一方で、たった96名の治験が何ヶ月経っても終了できない状況に企業は追い込まれてしまいました。
科学的に承認されていない適応外使用は、あるいみ医師の特権として考えられていて、観察研究という傘の基に医師および患者は無償でアビガンを使うことができました。治験では様々なデータをとり記録し企業へ提供する必要があります。治験に参加してエビデンスを創るという手間暇を医師が回避しまうのは、観察研究の手軽さと比べれば、当然のことで患者のことを思えば非難できることではありませせん。だからこそ、国はいかに症例登録を進めて治験を早期に完了できるか、という戦略が必要でした。4月末時点で観察研究により2000名以上が投与されていました。
厚生労働省による、医師の要望に応えるだけで国家的かつ科学的な戦略のない対応は、結果として、治験を阻害し、官邸が目標としていた「5月中のアビガン適応拡大承認」の達成困難としてしまっていると思います。
- 3月23日 https://www.mhlw.go.jp/content/000617744.pdf
4月2日 https://www.mhlw.go.jp/content/000618587.pdf
4月27日 https://www.mhlw.go.jp/content/000625756.pdf (別添https://www.mhlw.go.jp/content/000625757.pdf )
5月4日 https://www.mhlw.go.jp/content/000627570.pdf